コスパ最強!社宅で節税する方法はコレです!

社宅による節税がうまくハマると最強である理由

こんにちは!石川県庁から車で5分の税理士事務所 たまの会計の玉野敦朗です!

今日は社宅で節税する方法について解説していきたいと思います。

個人的に社宅を利用した節税は、うまくハマればかなりの節税効果を挙げるコスパ最強の方法だと思います。

無償で社宅を貸し付た場合の税務上の取扱い

社宅を利用した節税について解説する前に無償で役員や従業員に社宅を貸し付けた場合の税務上の取り扱いについて見ていきたいと思います。会社が賃借しているアパートの一室を従業員に無償で貸し付けている場合で考えてみましょう。

結論から申し上げると、会社が賃借しているアパートの一室を従業員に無償で貸し付けた場合、会社が支払う家賃相当額については、従業員の給与として取り扱われることになります。

なぜ、会社から従業員に直接お金を支払ったわけでもないのに給与になってしまうのか?所得税法の36条にこういう条文があります。

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

要するにお金だけではなく、その人が受けた経済的な利益にも所得税を課しますということです。つまり、アパートを従業員に無償で貸し付けるということは、そのアパートの家賃相当額を従業員に支給していることと実質的に変わりないということで、家賃相当額については従業員の給与として取り扱われることになります。

これによりどのような不都合があるのかといいますと、給与課税された場合、当然、無償で貸し付けている従業員や役員の所得が上がりますので、所得税や住民税の負担が増えることになります。その結果、家賃という経費が増加し会社の所得が削減される一方で個人の所得が増えます。個人に適用される所得税は累進課税なので、法人と個人を一体のもとして見た場合、条件次第ではむしろ損になる可能性があるわけです。

しかし、一定の条件のもと給与として課税しなくとも良いという規定があります。その規定を利用したのが、今回紹介する社宅を利用した節税策です。

給与課税されない場合とは?

会社が賃借した住宅を役員や従業員に貸し付けても給与課税されないにはどうすればよいか?結論は、その貸し付けた住宅について役員、従業員から賃料相当額をもらうことで、給与課税されないことになります。

結局、お金を会社に払うのでは意味がないのではと思われるかもしれませんが、この賃料相当額については算定方法が決められており、場合によっては賃料相当額が家賃の10%程度になることがあります。つまり、月の家賃が10万のマンションを社宅として役員に貸し付けても、その役員から1万円をもらえば、役員に給与課税が生じないと場合があるいうことです。結果として差額の9万円を会社から役員へ無税で移転させることができます。

具体例を挙げると、年間の役員報酬が500万円の役員について、役員報酬を月々9万円増額する場合と、上記のようなケースで社宅を貸し付けた場合、前者では役員報酬を増額するので年間の給与収入が108万円増加し、所得税の負担が15万円ほど増加しますが、後者では給与課税されないため所得税の負担は増加しないことになります。

では、次にどのようにすれば社宅を貸し付けても給与課税されないのか、その具体的な条件について見ていきましょう。

社宅は3つに分類される

社宅に関する税務上の取り扱いは所得税基本通達に規定されています。通達というのは公務員の世界で上役が下役へ出す命令だと考えてください。必ずしも納税者が従う必要はありませんが、現実には税理士含めこの通達を参照しながら税務処理を行うことがほとんどです。この通達のなかで社宅は、小規模社宅、豪華社宅、一般社宅の3つに分類されています。かなり細かい話となりますが、どの社宅に該当するかによって賃料相当額の計算方法がことなりますので、それぞれの社宅の定義からお話したいと思います。

小規模社宅とは?

賃貸物件の床面積が132平方メートル(木造家屋以外の家屋については99平方メートル)以下のものをいいます。なお、マンションなどの集合住宅の場合は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えた面積で判定します。

木造家屋か否かの判定についてですが、その建物の法定耐用年数が30年以下の場合は木造家屋、30年超の場合は木造家屋以外の家屋となります。具体的には次の通りです。

  • 木造・合成樹脂造りのもの 法定耐用年数22年
  • 木骨モルタル造のもの 法定耐用年数20年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 法定耐用年数47年
  • れんが造・石造・ブロック造のもの 法定耐用年数38年
  • 金属造のもの 
    • 骨格材の肉厚が4mm超 法定耐用年数34年
    • 3㎜超、4㎜以下のもの 27年
    • 3㎜以下のもの 19年

つまり、木造家屋となるのは木造・合成樹脂造りのものと木骨モルタル造のもの、一部の金属造のものに限られることになります。金属造は骨格材の肉厚によって法定耐用年数が異なるので、注意が必要です。

豪華社宅とは?

豪華社宅は床面積が240㎡を超えるか否かにより判定方法が異なります。床面積が240㎡を超える場合は、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。

床面積が240㎡以下の場合は、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人の嗜好を著しく反映した設備等を有するものなどが該当します。

ですので、上記小規模社宅に該当する面積の住宅であっても、一般的な住宅ではない設備(映画好きの社長ならシアタールームとか。)があると豪華社宅という扱いになります。

一般社宅とは?

上記の小規模社宅、豪華社宅のいずれにも該当しない社宅をいいます。

賃料相当額の計算方法はコレ!

賃料相当額の計算は基本的にはその賃貸物件の固定資産税における固定資産税評価額をもとに計算します。固定資産税評価額とは、国が定めた固定資産評価基準に基づいて知事または市町村長が決定するものです。

似たような言葉に固定資産税の課税標準額というものがあります。課税標準額と固定資産税評価額は基本的には一致しますが、一部の家屋や土地には課税標準の特例措置が適用されることがあるので、その場合は課税標準額が固定資産税評価額を下回ります。

国税庁が公表している通達を見ると、社宅の賃料相当額の計算方法に関して、固定資産税の課税標準額をもとに賃料相当額を計算していますが、下記の質疑応答事例に「固定定資産税の課税標準額は、賦課期日(1月1日)における固定資産の価格として固定資産課税台帳に登録されているものをいいます。」とあり、「固定資産の価格として固定資産課税台帳に登録されているもの」とは固定資産税評価額を指していることが分かります。ややこしいですが、国税庁では「固定資産税評価額」を意味する言葉として「固定資産税の課税標準額」を使用しているということです。

社宅に係る通常の賃貸料の額を計算する場合の固定資産税の課税標準額

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/04.htm

小規模社宅の場合の賃料相当額の計算方法

床面積が132平方メートル(木造家屋以外の家屋については99平方メートル)以下の住宅である小規模社宅の賃料相当額は下記の①、②、③の合計額が月々の賃料相当額となります。

①その年度の家屋の固定資産税評価額×0.2%

②12円×(当該家屋の総床面積(㎡)÷3.3)

③その年度の敷地の固定資産税評価額×0.22%

ちなみに②で総床面積(㎡)を3.3で除算しているのは、㎡単位を坪単位に換算するためです。つまり一坪につき12円という計算になります。

一般住宅の場合の賃料相当額の計算方法

一般社宅の場合は、下記の①と②の合計額を12ヶ月で月割りした金額と家賃の50%相当額を比較して、いずれか多い額が賃料相当額となります。一般的には家賃の50%相当額が固定資産税の課税標準額をもとに計算した金額よりも多くなることが多いかと思います。

①その年度の家屋の固定資産税評価額×12% ※木造以外の家屋の場合は10%

②その年度の敷地の固定資産税評価額×6%

豪華社宅の場合の賃料相当額の計算方法

豪華社宅に該当する場合の賃料相当額は、「通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額」とされています。つまり、賃貸物件であれば、実際に会社が支払っている家賃が賃料相当額ということになります。こうなると、実際の家賃と賃料相当額に差がないので、当然節税の効果もゼロということになります。

では、社宅を購入した場合や会社が建設した場合はどうするか?通達のなかでは明確に規定されていませんが、代表的な方法としては2つあります。

1つ目が賃貸事例比較法です。その名の通り、実際の賃貸物件のなかから購入または建設した物件の類似の物件の賃料を参考する方法です。この方法の難しいところは、類似の物件がないというケースが多々あることです。例えば全く同じ物件であっても、その建設された場所がどのような地域なのかによっても賃料は変わりますし、その逆もあります。つまり、よほど運良く類似の物件を見つけることができなければ、この方法は役に立ちません。

2つ目が積算法です。対象となる不動産の基礎価格に期待利回りを乗じた額に必要な諸経費を加算して賃料相当額を算出する方法です。基礎価格は、その物件の購入した場合はその購入価格、建設した場合は建設するまでに要した金額の合計額と考えればよいかと思います。 一般的には積算法を用いて賃料相当額を計算すると思います。

固定資産税評価額を知るには?

ここまで賃料相当額の計算方法について見てきましたが、そもそも計算のもととなる固定資産税評価額を知るにはどうしたら良いのか?という問題があります。賃貸物件の大家さんと顔見知りで頼めば見せてくれるような関係であれば良いのですが大抵の場合は無理でしょう。この点については、実はその物件の賃借人は物件の固定資産税の評価額及び課税標準額の証明書をもらうことができます。

平成14年度税制改正で可能となったもので、賃借人が家賃交渉をする場合に固定資産税を知らないと不利な立場に立たされることが想定されることから新たに設立されました。

例えば金沢市では下記のリンクがそれに該当します。

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/shisanzeika/gyomuannai/1/1/tetuduki/shisan/9209.html

会社の場合が契約した物件について固定資産税評価額を確認する場合は、次の3つを窓口に持参します。

・賃貸借契約が確認できる契約書

・法人の代表社員が押印された委任状

・申請者の本人確認書類

なお、固定資産税の評価額は三年ごと評価替えが行われますので、社宅を借り上げる場合は、自治体に対して三年ごとに、固定資産評価証明の発行の手続きを行う必要があります。前回の評価替えが令和3年にございましたので、次回の評価替えは令和6年となります。

まとめ

以上が社宅による節税策になります。うまくハマれば節税効果は絶大なので、賃貸物件にお住まいの社長は検討されてはいかがでしょうか?

今日の話はこんな感じです。お読みいただきありがとうございました!